○伊之布麻受
石も踏まぬ勢いで、足が石を踏むことも意識せずに。
○蘇良由登伎奴与
「ユ」は前出の「ヨ」と同じ。空を通って来たんだよの意。
○奈我己許呂能礼
「心」とは求婚に対しての諾否であり、あなたの本当の気持ちを言って下さいの意。
◎訳
下野にある安蘇の川原のごつごつした石も感じないで、空を飛ぶ思いでやってきたよ。どうかあなたのお気持ちを聞かせてください。
→赤裸々に、全面を披瀝しての心で、その情熱と素朴と一本気とは、求婚の歌として珍しいものである。地方歌の特色のある歌である。（評釈）