学生達の印象に残った万葉歌（平成17年度）
平成１７年度の日本文学基礎講読１は『万葉集』を読みました。その期末レポートの一部として、「この授業で取上げた歌の中から最も印象に残ったものを１首選び、その歌のどういう点が印象に残ったのか書きなさい。」という問題を出しました。その結果をご披露します。
昨年度も全く同じ問題を出したのですが、第１位の二首は昨年度と全く同一でした。この二首、不動の強印象のようです。１番歌が最も印象に残ったというのは、この授業で扱った最初の歌が１番歌で、語釈や訓読をかなり詳細に説明しましたので、それで「高校までの授業と全然違う」という意味で「最も印象に残った」ということがあるようです。
３位を占める五首の多くも昨年度の上位ランクの歌です。
順位 票数 番号 歌 作者 1 ４ 1 籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この岳に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね
そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ居れ
われにこそは 告らめ 家をも名をも雄略天皇 1 ４ 661 恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば 大伴坂上郎女 3 ２ 103
104わが里に大雪降れり大原の古りにし里に落らまくは後
わが岡のおかみに言ひて落らしめし雪の摧けし其処に散りけむ天武天皇
藤原五百重娘3 ２ 203 降る雪はあはにな降りそ吉隠の猪養の岡の寒からまくに 穂積皇子 3 ２ 1500 夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ 大伴坂上郎女 3 ２ 3400 信濃なる筑摩の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ 東歌（信濃） 3 ２ 4290 春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に鴬鳴くも 大伴家持 8 １ 16 冬こもり 春さり来れば 鳴かずありし 鳥も来鳴きぬ 咲かずありし 花も咲けれど
山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては
黄葉をば 取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山吾は額田王 8 １ 57 引間野ににほふ榛原入り乱れ衣にほはせ旅のしるしに 長意吉麻呂 8 １ 115 後れゐて恋ひつつあらずは追ひ及かむ道の阿廻に標結へわが背 但馬皇女 8 １ 116 人言を繁み言痛み己が世に未だ渡らぬ朝川渡る 但馬皇女 8 １ 337 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむぞ 山上憶良 8 １ 343 なかなかに人とあらずは酒壷に成りにてしかも酒に染みなむ 大伴旅人 8 １ 803 銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも 山上憶良 8 １ 1068 天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ 柿本人麻呂歌集 8 １ 1420 沫雪かはだれに降ると見るまでに流らへ散るは何の花ぞも 駿河采女 8 １ 1471 恋しけば形見にせむとわが屋戸に植ゑし藤波いま咲きにけり 山部赤人 8 １ 1518 天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな 山上憶良 8 １ 1537
1538秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花山上憶良 8 １ 1568 雨隠り情いぶせみ出で見れば春日の山は色づきにけり 大伴家持 8 １ 1639 沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し思ほゆるかも 大伴旅人 8 １ 2381 君が目を見まく欲りしてこの二夜千歳の如く吾は恋ふるかも 柿本人麻呂歌集 8 １ 2546 思はぬに到らば妹が嬉しみと笑まむ眉引き思ほゆるかも 作者不明 8 １ 3414 伊香保ろのやさかのゐでに立つ虹の現はろまでもさ寝をさ寝てば 東歌（上野） 8 １ 3724 君が行く道のながてを繰り畳ね焼きほろぼさむ天の火もがも 狭野弟上娘子 8 １ 3774 わが背子が帰り来まさむ時の為命残さむ忘れたまふな 狭野弟上娘子 8 １ 3900 織女し船乗りすらし真澄鏡清き月夜に雲立ち渡る 大伴家持 8 １ 4143 もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花 大伴家持 8 １ 4516 新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事 大伴家持